研究ラボ紹介
継続課題 新規領域開拓
マルチスケール時間分解 X 線結晶構造解析による酵素学 2.0 の開拓
研究代表者:山元 淳平 物質創成専攻・機能物質化学領域
研究分担者:Manuel Maestre-Reyna National Taiwan University
研究分担者:八木清 理化学研究所
研究分担者:Antoine Royant European Synchrotron Radiation Facility
反応中のタンパク質の動きから機能を理解する
生体内で多くの機能を司るタンパク質が触媒する化学反応を理解するためには、これら生体分子の三次元構造を知る必要があり、現在までにX線結晶構造解析法・核磁気共鳴分光法・低温透過電子顕微鏡法などの生体分子構造解析手法によって数多くのタンパク質三次元構造の原子座標が決定・登録されています。生体分子の三次元構造を用いることで、基礎科学の理解の促進に留まらず、計算機上での薬剤開発や新たな人工酵素やバイオテクノロジー技術の開発に結びついていますが、高分解能構造同定が可能なX線結晶構造解析はその測定原理から液体窒素温度での測定が余儀なくされ、静的な三次元構造しか得ることができないという欠点があります。
従来の酵素反応機構解析は、得られた静的な三次元構造から反応に関与することが推測されるアミノ酸側鎖に変異を導入し、酵素反応にどのような影響があるのかを調べることで理解を深める戦略がとられます。本申請課題では、野生型タンパク質が化学反応を触媒する瞬間の三次元構造を撮影する時分割X線結晶構造解析に計算科学的手法を組み合わせることで、その瞬間の動きから機能を同定する、従来の酵素学から進化した新学問領域「酵素学2.0」の開拓を目指します。